2010年2月18日
ガートルード・ベル
最近、強い感心がある中東について、いろいろな本を乱読している。どうも中東というのは自己主張をしないというか、英米とは縁遠いというか、とにかく中東側から見た情報が分かりにくい。その最たるものは、「アラビアのロレンス」の存在で、実は中東の理解が激しく低かったイギリス人の T.E. ロレンスがアラブの開放者のようにアメリカの軍属ジャーナリストによって祭り上げられ、しかもロレンスが引っ込み思案な目立ちたがり屋という厄介の性癖のせいでそれを否定しなかったため、ロレンスは未だ勘違いされたままだ。ロレンスはきちんとしたアラビア語を習得することができなかったらしいし、下手くそな字で口語でしか文章を書く事ができなかったそうだ(アラビア語は口語と文語がかなり異なるらしい)。
それに比べると同じ時期に登場する、ガートルード・ベルというイギリス人女性は凄い。今、シリア縦断紀行という本を読んでいるのだが、その観察力と人々との会話の話題の豊富さなど素晴らしい。いくら異教徒、異国民といっても女性でありながらアラブ社会のなかで男性と対等に渡り合えるなんて、信じられないようなことだ(もっとも客を大事にするのがアラブの真骨頂なのだが)。
少なくともアラビア語に関してはまったく困っていなかったようで、フランス語とドイツ語も普通に使っている。文章の上手く、言い回しも巧妙で、何かにつけ凄いとしかいいようがない。彼女に比べるとロレンスなんか石コロのようなものだ。
写真も上手い。昔の写真なのでレンズが暗く、露光時間が長くなり被写界深度が深くなりやすいのだろうけれど、白黒の強弱の強い砂漠地帯の石造建築物など、奥まった景色まできっちりと撮影されているのには感心した。写真撮影にかんしてはロレンスも得意だったようだが、ベルは構図もいいし、大した才能だ。
まだまだ勉強しなくてはいけないことがたくさんある。
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